建築と歴史 about architecture and history

建築についてabout buildings

御室に佇む、由緒正しい郊外邸宅建築。

仁和寺で知られる京都府右京区の御室。その一角に、築80年の郊外邸宅建築が当時の美しさそのままに残されています。そこは「旧邸御室」。500坪の敷地に建つ数寄屋造りの邸宅に足を踏み入れると、昭和初期の風情そのままの世界が広がります。網代の天井、一本木の敷居、22畳の開放的な大広間には一枚板のテーブルが佇みます。大広間の広縁の先に広がるのは四季折々の情緒を魅せる日本庭園。双ヶ岡の斜景を利用した庭には大小合わせて15の灯籠が並び、奥には木造平屋建の茶室双庵が待ち受けます。邸宅二階の洋間からの景色も美しく、庭園は見る角度、時間、季節によって様々な表情を魅せてくれます。また、洋間にある6枚もの天井画、昭和初期の色気に満ちたガラス、独特の張りつめた空気に包まれた土蔵など、随所に和の心を感じとることができます。旧邸御室は保存状態がよく、主屋、壁、土蔵、茶室双庵、茶室御待合所の5ヵ所が有形文化財に登録。昭和初期の高貴な郊外邸宅建築の様子を知ることができます。

旧邸御室の歴史history

昭和12年に建てられた旧邸御室。数寄屋造りの見事な装飾が随所に見られる郊外邸宅建築ですが、その設計者および建設目的は不明。邸宅のすぐ南側にある天皇ゆかりの門跡寺院「仁和寺」にそっと隠れるように佇んでおり、関係性は明らかになってはいませんが格式の高さを受け継いでいるかのような趣を備えています。所有者の変遷も定かではありませんが、昭和44年、当時、住居として所有していた大手酒造会社役員・四代目阿部喜兵衛氏より、現オーナーの父である株式会社山三製材所社長の山本三夫が購入。四代目阿部喜兵衛の祖父にあたる二代目阿部喜兵衛は、朝の連続テレビ小説「マッサン」のモデルで話題となった竹鶴政孝氏をスコットランドへ送り出したことで知られています。平成28年11月、旧邸御室は建築物としての保存状態がよく、茶室や待合を備え、美しい庭が一望できるという郊外邸宅建築の特徴を持つことから国登録有形文化財に登録。平成29年5月2日付の「第95号官報」に掲載されました。

所有者についてabout owner

旧邸御室の現在の所有者は、株式会社山三製材所創業者・山本三夫の次女である村田章代になります。京都市中京区にある山三製材所は先代が一代で築き上げた会社で、創業当初は製材業を行っていました。今日では賃貸業と住宅に関する会社として、地域の豊かな暮らしづくりに関与しています。
「父が残してくれた形見といってもいい邸宅を皆で守っていきたい」という想いを込めて、旧邸御室を次代へと残していくために、文化財としての価値を利用して、この街の文化の発展・繁栄に貢献できる場となることを目指しています
(事業運営は、株式会社Evansが行っております。)